中国スヌーカー史至上屈指の激戦を制したのはマーク・セルビー:チャイナ・チャンピオンシップ 2018

昨日の午後、バニラビーンズというお店に行きました。壁はレンガ調でシックな色合い。フロアには黄色がかった電球色が輝き、店内の家具や食器を魅力的に照らしていました。
僕は大がつくほどホットココアが好きで、さまざまなカフェのココアを飲み比べています。そして昨日、ついにこれだというココアに巡り会いました。
看板商品のバニラビーンズ・ショコラッテはカカオ使用率70%という高濃度のホットチョコレートです。甘さよりも苦みが主張する、ドロっとする粘性が強いドリンクでした。こんなにも濃厚なホットチョコレートはこれまでに飲んだ経験がなく、一瞬で虜にされました。自分の理想としていたホットチョコレートに出会った瞬間でした。
そんなことを考えている内にチャイナ・チャンピオンシップ2018の決勝戦は始まろうとしていました。

その前に今大会の流れを軽く触れておきましょう。

準々決勝ではジョン・ヒギンズ対ジャッド・トランプというトップランカー対決が実現しましたが、今年の世界王者同様、ベテランのジョン・ヒギンズが”The Ace in the Pack”を沈めました。

反対側のブロックでは中国の次期エース、ザオ・シントンがバリー・ホーキンスをディサイディング・フレームで倒し、準決勝へ進出しました。しかし、続くマーク・セルビーの前では最後のひと踏ん張りが出来ず、大会から姿を消しました。

かくしてチャイナ・チャンピオンシップ 2018のクライマックスは世界ランキング1位のマーク・セルビーと現在42歳にして今なお世界ランキング4位、さらに2016年今大会優勝者ジョン・ヒギンズとの戦いとなりました。

第一セッション前半はセルビーがリードします。フレームカウント3-1とリードして優勢に試合を運びます。ここからヒギンズがフレームを連取して前半戦をフレームカウント5-4と巻き返してイブニング・セッションへ向かいます。初めのセルビーが2フレーム差をつけて以降、この試合は均衡して進みます。

セカンド・セッションからこの試合は深淵の世界に入り込みます。お互いにビック・ブレイクを出すとはないのですが、考え抜かれたセーフティとショット・セレクションでお互いにチャンスを残しません。
またヒギンズは好調といえず、ポッティングに苦しんでいた印象でした。またセルビーはのショット自体は良いものの、アンラッキーな状況が多々見受けられ、勢いに乗り切れず足踏みをしていた印象がありました。

印象的だったシーンは第14フレーム、ヒギンズのセーフティミスから難しい配置をセルビーが取り切れるかというシーンがありました。このフレームを取ればここまでの均衡は破れセルビーが一気に優位な状況になることは明らかでしたが・・・。

先ほどのフレームは落としたものの、ブレイクで畳みかけるチャンスが訪れましたが・・・

 

このケアレスミスからヒギンズが優勢に試合を運び、フレームカウント8-7と逆転に成功しました。

第16フレームはお互いポッティングミスが目立ち、セーフティの攻防で大部分を占める展開になりました。名手ヒギンズが空クッションからのショットをミスし続けて、セルビーに最高の形でフリーボールを与えフレームカウントは8-8の同点となりました。

第17フレームはヒギンズがリードしますが、終盤でロングポットをミスし、セルビーにラストチャンスが巡ってきます。クリアランスをして王手をかけるかと思いきや、ブルーからのポジションがショートとなり、そのツケがラストブラックに回ってきました。このブラックを外すも手球はクッションに近づけて難しい配置を残しますが、さすがジョン・ヒギンズ。この難易度が高いポットを成功させます。信じられません。

第18フレームはヒギンズがリードします。セルビーも難球を処理して追いつきそうになりますが、果敢に攻めたレッドが運悪く残ってしまいます。ああセルビーの頑張りもここまでかと思いきや、ヒギンズが初球のレッドを入れたもののバックスピンが不十分で、リスキーなダブルを狙うプランに変更します。

ダブルの名手ヒギンズでしたがウィニングボールを得ることは出来ずセルビーにロングポットチャンスを渡します。この一触即発の場面にもかかわらず、このレッドを果敢に攻めて沈め、クリアランスを成功させます。

勝負はディサイディング・フレームへ

このフレームは、決勝戦を象徴するような展開となりました。
セーフティにセーフティを重ね、会場にも緊迫した空気が張り詰めます。
この展開は2016年のUKチャンピオンシップでの準決勝戦を彷彿とさせる展開です。セーフティが続き、最終的には有効手が無くなりロールし続けるしか選択が無くなるという、究極の我慢比べが印象的なスヌーカー史に残る試合でした。

 

さて、セーフティの攻防の末、セルビーがダブルで攻めますが運悪くレッドがポット可能な場所に残ります。セルビーは万事休すか・・・

と思われましたが、ヒギンズがポットミスを犯します。そのままセルビーがフレームボールを落とし、7時間24分に及ぶ大接戦のマラソンマッチを制しました。

ただ観ていた僕でさえ疲れるような展開です。実際にプレーしているこの二人はどれほど精神力を削られながらも戦ったのか、想像を絶しますね。この試合が終わったとき日本時間ではちょうど午前1時半でした。

この試合は最近のゲームとしては非常に珍しく、ポッティングでハイブレイクを築いていくハイスピードな展開ではなく、真逆のセーフティでじっくりじわじわと相手のミスを誘う展開の試合でした。その試合展開ゆえか海外のネット上での反応は

「素晴らしい!まさにスヌーカーらしい試合だ!お互いの駆け引きを楽しめた!」という声と

「なんてのろまな試合なんだ!退屈すぎるよ!遅すぎ、やっぱロニーじゃないと!」

という意見にはっきりと2極化しています。僕の印象ですが7:3で好意的な意見が多数派です。
しかし、批判したくなる気持ちもわかります。テンポがいいスヌーカーの中に、このような駆け引きがあればちょうどいいのですが、この試合は半分以上のフレームがセーフティメインの展開でした。センチュリーの数もセルビーが1回出しただけという寂しいものでした。しかし、よく考えてみるとここまでセーフティをミス少なくプレーし続けられるプレイヤーは世界広しといえどもこの二人以外いないでしょう。そういう組み合わせから生まれた奇跡的な展開だったのかもしれません。

はて、この試合が終わり、何か引っかかるなと思っていました。
そうかこの日に飲んだ濃厚なホットチョコレートのような、胸焼けを起こしそうな試合内容だったのです。

一滴一滴が非常に濃厚で、とてもすぐには飲み干すことの出来ないもの。

この試合を例えるなら、まさにバニラビーンズのホットチョコレートです。
気持ちよくハイテンポでボールをポッティングしていくのは喉越しのいい飲み物でしょうか。
香りと苦みが強すぎて好きじゃない人は多いけど、やり過ぎなくらいな濃厚なタクティカルゲームが好きな人ならきっと気に入るセルビーとヒギンズの試合。

一度この試合を観てから、バニラビーンズのホットチョコレートを是非飲んでみてください
この試合だけでなく、スヌーカーという競技をさらに深く理解できる・・・かもしれません。

 

さて今日からはベルギーでヨーロッパ・マスターズが始まりました。
セルビーはこの調子でランディング・イベント2連勝となるのでしょうか。

Pocket

コメント

comments