前代未聞のカムバック、15年ぶりの頂点へ:スヌーカー世界選手権 2018 レビュー

日本時間5月8日明け方、今シーズンのメインツアーが幕を閉じました。最後に栄光のトロフィーを手にしたプレイヤーはいったい誰なのでしょうか。

まずは準決勝戦の結果から

ジョン・ヒギンズ対カイレン・ウィルソンの試合は終始ヒギンズがリードした展開でした。カイレンはあと一歩で追いつけるというシーンが何度もありましたが、勝負強さの差が明暗をはっきりと分ける結果になりました。経験の差がこれほどまでにも明確に現れるゲームも珍しい。そんな試合でした。

もう一方はベテラン同士の均衡したゲームでした。マーク・ウィリアムズ対バリー・ホーキンス戦は、終盤までホーキンスが僅かにリードしていましたが、フレームカウント15-15になってからウィリアムズが2連取し、2003年以来のファイナル進出が決まりました。ホーキンスは終盤のミスが悔やまれます。去年も準決勝戦で負けてしまっただけに今回もそのことを意識してしまったのではないでしょうか。

これらの結果から決勝は75年生まれ同士の対決となりました。2000年代のスヌーカーシーンを代表するこの二人ですが、意外にも世界選手権の決勝で戦うのは今回が初めてです。

↓決勝戦までのダイジェスト。軽快な音楽と共にテンポが良い編集です。さすがBBCのスタッフはレベルが違う。

 

ここまでの流れを見たところで決勝戦を振り返りましょう。

ファースト・セッションではマークJが4フレーム連取のロケット・スタートを切ります。しかし第5フレームはヒギンズがセンチュリー・ブレイクで大きな1フレームを獲得し、マーク・ウィリアムズの後を追います。

セカンド・セッションではお互いハイブレイクを続けざまに出し、好調さが窺えます。このセッションではフレームカウント10-7でウィリアムズがリードし後半戦へ向かいます。昨年の世界選手権の決勝のセカンド・セッション終了時のスコアは10-7で、劣勢だったマーク・セルビーが歴史に残る大逆転勝利を演出しましたが今回は如何に。

サード・セッションは、ウィリアムズのフレーム4連取でヒギンズとの差がこの試合最大となるフレームカウント14-7と大きく引き離され、試合はほぼ決まったかと思われました。しかし続く9フレーム中8フレームをヒギンズが勝利し、スコアは15-15の同点でこの試合の佳境へ向かいます。

第32フレーム目、マーク・ウィリアムズがセンチュリー・ブレイクでフレームカウント17-15とし、優勝まであと1歩とし第33フレームへ向かいます。

フレームボールのピンクを外してしまったウィリアムズにはヒギンズから手痛いクリアランスを受けてしまいました。これによりゲームはより一層結果が読めない展開へ入り込んで行きます。

流れはヒギンズに傾いていると多くのファンは思ったことでしょう。もちろんマーク・ウィリアムズもです。この次のフレームは想像を絶するほどのプレッシャーがマークJに襲いかかったことは疑いようがありません。しかし、取り出しの超難球となるレッドをミドルポケットに入れたとき、かつて無いないほどの集中力をウィリアムズは発揮しました。ここで69点までブレイクを延ばしますが、勝利を確信して集中力が切れたのか簡単なブラウンを外してしまい、最後は綺麗に締め切れませんでしたが15年ぶりの優勝を果たしました。

マーク・ウィリアムズは2000年、2003年に続く優勝ですが、驚くことに決勝戦のフレームカウントはすべて18-16でした。
今年で43歳のマーク・ウィリアムズはレイ・リアドン(当時45歳)に次ぐ最年長王者になりました。昨年は予選落ちのため、世界選手権本戦に出場すらできず、引退を決断する直前だった男がこの結果です。まったくにわかには信じがたい物語です。本人も本気で優勝できると思っていなかったのか、準々決勝が終わった直後に「もし俺が優勝したら全裸で記者会見をやってやる」と宣言していました。もちろんそんなことをした前例などありません。果たしてマークは全裸で現れるのか?一部の女性ファンから需要があるのかどうかすら定かではないこの宣言から、その時は訪れました。

ほ、本当に脱いできたーっっっ!!!

有言実行とはまさにこの事。
この後ウィリアムズは
「来年ここにまた戻ってくるのが待ちきれない。次回は口を滑らせて、こんな姿で記者会見をやるなんて馬鹿げた事は言わないようにしないとな。まぁでも、また勝ったら裸で(腕立て)側転でもやってやろうかな!」
とウィリアムズ節全開の会見でした。

↑試合の翌朝、チーム・サイトライト所属のコーチ、リー・ウォーカーとのひととき

 

敗れたジョン・ヒギンズはこれで2年連続の準優勝となり、これはジミー・ホワイト以来の記録です。どうせならヒギンズにはジミー・ホワイトの記録(1990年~1994年)を破る6回連続準優勝を達成してほしいと思っているのは僕だけでしょうか。
ヒギンズはサード・セッションでフレームカウント14-7と突き放されたことがこの勝負では大きな痛手となりました。その劣勢から持ち直したのは見事でしたが、最後は届かずに散りました。ヒギンズは
「ファンからは今回が世界王者になる最後のチャンスだといわれたんだ。でも自分はそうは思わない。来年こそは必ず優勝する」
と来年に向けて前向きなコメントを残しており、この世代が活躍する期間はまだまだ続きそうです。

今回の決勝戦の内容ですが(正直まだ僕もほとんど観ていないので偉そうなことはいえませんが)
まず1つ目はハーフ・センチュリー以上のブレイクはマーク・ウィリアムズが14回(内センチュリーブレイク2回)、ジョン・ヒギンズは16回(内センチュリーブレイク4回)の二人で計30回です。これは2015年のファイナルと同じ回数で、ベスト・オブ・35の試合では最多記録です。お互いどれだけミスが少なかったかが理解できます。

2つ目は今回34フレームが行われましたが、試合時間は9時間かかっていません。1フレームごとのアベレージタイムが短かったので、あまり長時間のセーフティが続く展開にならなかったという事が推測されます。これはその時の展開や、プレイヤーのスタイルが影響していますが、メリットを上げるとすれば試合のテンポが良く、観客も疲労が溜まらずに観戦できる、どちらかといえば万人受けしやすい、わかりやすい試合だといえます。
逆にスヌーカーを見慣れていて、戦略性と戦術性を考慮してじっくり数手先の複雑な展開、カオスな状況を読み解いていくのが好きな人は少々物足りなく感じた人がいたかもしれません。デメリットとして、これらはやはり試合時間が長くなってしまします。
個人的な考えですが、今回の二人はベテランなので体力的な問題から後者の展開を無意識に避けていたのかもしれません。

では最後に、恒例のShot of the tournamentです。

個人的に
1位はJのマーク・ウィリアムズのダブル・プラント
2位はHのカイレンのフォロー・ショット
3位はGのリッキー・ウォールデンのセーフティ
です。

皆さんはどのショットが気に入りましたか?

これで今シーズンの試合はすべて終了となりました。
皆さんは今シーズンについてどんな感想をお持ちですか?
後日今シーズンの総括記事を上げる予定なのです。

今大会はおそらく未来永劫に語り継がれるほど素晴らしい大会だったのではないでしょうか。僕はこれからじっくりとファイナルの試合を初めから観たいと思います。

素晴らしい感動を与えてくれたスヌーカー・プレイヤー達に感謝します。プロの皆さん、お疲れさまでした!!

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