スヌーカー観戦マニュアル その5 : ファールについて

スヌーカーは決断のスポーツです。この競技は大部分において複数の選択肢が与えられ、その状況に応じてプレイヤーが決断していきます。まさに意思決定を行うことがスヌーカーをプレーするといえます。今回は特に決断が重要な要素となるファールについて考えてみます。ところでスヌーカー世界選手権の予選も後半戦へ突入しております。21日(土曜日)からキュースポーツ界最大のイベント、スヌーカー世界選手権本戦が開催されます。ここでルールをしっかり理解した上で観戦すると楽しさ倍増間違いなしなので、ちょっとややこしいかもしれませんが頑張っていきましょう。

まず、なぜここに来るまでファールをしなかったのかというと、ファールの詳細を解説するにはまず点数論とフリーボールを理解していないと、絶対にわかりません。まずそこがあやふやの方は必ず観戦マニュアル1観戦マニュアル2観戦マニュアル3観戦マニュアル4を理解した上で以下読み進めてください。わからない、不明瞭な部分がある方はコメントを書いて頂けたらお答えします。
言い換えるとこれまでは、今回のファールの記事を書くための布石だったと思ってください。それでは進めましょう。

 

まずは基本情報から。ファールをすると相手に4点~7点が与えられます。以下すべてファールをしたプレイヤーを太郎、ストライカーとなるプレッシャーを花子とします。

ファールをした場合の相手に与えられる点数ですが、4点~7点と幅があります。もし太郎がブルーボールに関係したファールをした場合は5点が花子へ、ピンク・ボールなら6点が花子へ、ブラック・ボールなら7点が花子へ入ります。例としては太郎がピンク・ボールを狙い、ポットしたがキューボールもイン・オフ(スクラッチ)した場合は花子に6点が入ります。その他いろいろな状況が考えられますが、この3種類のボールが関係したファールはその点数が相手へ入ります。

相手との点数差が大きく離れており、ファールを奪わなくては逆転できない状態に陥っていることを、スヌーカーがついている、といいます。例えばスコアが50ー20でテーブル上にはカラーボールだけが残っているとします(27点残り)。この時、負けているプレイヤーは27点取っても逆転できませんが1回ファールを奪いカラーボールをすべて沈めると 27点+4点=31点が加算され、スコアは50ー51で逆転勝ちできます。このように1回ファールを奪えば逆転勝ちできる状況を1スヌーカーついていると表現します(文字に釣られて1点差だから1スヌーカーという意味ではないです。)。口語使用例としては「1スヌーカーついているから、これを解除しなければ勝てないよ」などと使います。スコアが50-22、50-21、50ー20、50-19、(テーブル上の点数が27点残りの場合)の時は1スヌーカーついている。スコアが50ー18、50-17、50-16・・・の場合は2スヌーカーついていると言い、以下3スヌーカー、4スヌーカーと続きます。日本スヌーカー連盟のほとんどの試合では、ゲーム時間短縮のため3スヌーカー(9点差以上)ついたら強制コンシードとなるルールが採用されています。

ここでテクニカルな戦術を紹介します。
時は2011年の世界選手権決勝戦。世界選手権屈指の名勝負といわれているこの大激戦のラストでそれは起こりました。

ジョン・ヒギンズはトランプ相手に32点差で負けています。テーブル上にある残りの点数は27点なので5点届かない、よって2スヌーカーつけられています。普通、的球がテーブル上にたくさん残っている方がセーフティをしやすいので、ポットせずにセーフティに行くのがセオリーですが・・・

なんとヒギンズの選択はイエローからブルーまでポットして、ピンクでセーフティに行きます。こうすると、トランプがファールした場合、ピンク・ボールを狙ったファールになるのでヒギンズは一回のファールで6点を得られ、的球がたくさん(4個以上)ある状態では基本2回ファールを奪わなくてはならない状況を1ショットで解消してしまいました。
もちろん、的球がこのように少なくなるとセーフティしづらくなるので非常に難しいです。今回はピンクとブラックが比較的近い位置にあったので選択し、功を奏しましたがミスをした場合、次以降のセーフティが難しくなる諸刃の剣といえます。
このようにテーブル上状況によっては2スヌーカーが1スヌーカーに変わったりするので、この1スヌーカーや2スヌーカーというのは流動的な表現であくまで目安だと思ってください(フリーボールを考えるとわかりますよね)。

他に強制で7点ファールになる場合があります。例えばレッドを入れた後、勘違いしてまたレッドを狙ってしまったなど。詳しくはJSAのルールブック(第10章,第12条,第4項)を参照ください。
普通にプレーしていれば滅多に遭遇することはありませんが・・・。

さてやっと今回の本題に入ります。ファール後の花子の選択についてです。
花子には最大4つの選択肢が与えられます。

  1. 花子が現状からプレーする
  2. 花子がパスし、現状から太郎がプレーする(プレー・アゲイン)。
  3. オンボールがスヌーカー状態の時、フリーボールを選択しプレーできる(この場合は花子のみに適応される)
  4. レフリーがファール&ミスのコールをした場合、ファール前の状態に戻して太郎にプレーさせる(リプレイス)

1.と2.については説明不要かと思いますので割愛させて頂きます。3.についても前回の記事で解説したので飛ばします。

4.はスヌーカー独特のルール、リプレイスです。ファール直前の状況に戻し、相手が的球に当てるか、レフリーがミスコールをしなくなるまで続けなくてはいけないという鬼畜ルールです。ここで疑問を持つ方もいると思います。「もし元の状況に戻せないくらいグチャグチャになったらどうするの?」と。

答えは、もちろん全部戻します。

タイトルは「レフリーの悪夢」。これにふさわしくレフリーたちは皆苦笑いしてますね。頼むからリプレイスしないでくれ!と心の底から祈ってそうですが、スヌーカープレイヤー達は無情にも笑顔でリプレイスを要求するのでした。

このリプレイスですが、いつでも要求できるわけではありません。レフリーがファール&ミスとコールした場合だけです。よく勘違いされるのはファールしたらリプレイスが必ず選択肢に入っていると思われている人が多いのですが全く違います。

このミスとは、第一にプレイヤーがオンボールに当てるために最大限の努力を怠ったと判断されたときにのみコールされます。そのためレフリーによっては同じ状況でもミスコールする人もいればしない人もいます。これによりレフリーのプレイヤーとしてのレベルがある程度推測できるので、スヌーカー観戦の面白さの一つだと僕は思っています。

二つ目は相手との点数差から判断します。ファールが起こる前、または起こった直後に上記で出てきた1スヌーカー以上ついている状態になった場合、またスヌーカーが解除された場合はミスがコールされません。スヌーカーがついている、ついた場合ミスはコールされないと考えてください。特殊な状況として、もし27点差で27点残りの場合、勝っているプレイヤーがファールして23点差になったとしても、ミスはコールされません。取り切って同点になる場合も、1スヌーカーついていると解釈されます。

駆け足でファールについて見てきましたがいかがだったでしょうか。ミスコールの有り無しの判断は複雑で難しかったと思います。実際、毎週スヌーカーをプレーしている人でも正しく理解している人はほとんどいないと思いますから、わからなくてもそんなに気にしなくていいかなと思います。これはかなり上級者向けの内容なので、ミスがコールされる時とされないときがあるという事だけ認識してもらえたら十分です。

こういう状況ではどうなるのか知りたいという方はコメントの方で質問をください。今回はあまり個別の事例で詳しく解説していないので理解しづらく、疑問を抱く方は多いかと思います。

これでスヌーカー観戦するための必要十分なルールはすべて書き記したのではないかと思います。これらを理解していれば、今週末から始まるクルーシブルでの戦いをこれまで以上に楽しめるはずです。

 

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