なんとなく違和感を覚える日本での認識 スヌーカーとビリヤード

2017年も終わり新たな年に変わりました。メインツアーの大会も一段落したので、たまには自分が思うことでも書き綴ってみようかなと思います。あまり興味を惹かないようなコラムですが一読していただけるとありがたいです。

今回は日本における「ビリヤード」について考えていきたいと思います。勘違いしないでいただきたいのは「今後の日本でのビリヤード業界はこうあるべきだ!!」なんて偉そうなことを言うつもりは毛頭ございません。僕が言いたいのは「ビリヤードという言葉の意味」についてちょっと考えていきます。

そもそもビリヤードって言葉の意味は何なのでしょうか?
手元にあった三省堂国語辞典で調べてみると、

長方形の台の上に、数個の球を置き、専用の棒で突いて他のたまに当てて勝敗をあらそうゲーム。

とあります。なるほどこれならスヌーカーもアメリカン・プールもスリークッションもすべて「ビリヤード」でくくれます。というかこれってキュースポーツの事ですよね。日本ではビリヤード=キュースポーツで解釈されているといえます。

たまにツイッターで見かけるのは
「スヌーカーはビリヤードの大きいやつ」
と説明しているのです。確かに相手がキュースポーツに全く関心がない場合、不正確な表現でも、理解しやすい表現方を優先させるのが相手に対する思いやりになります。しかし、これでは生涯、誤解を与えたままでキュースポーツに興味を持ってもらえない可能性が高くなります。

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僕がオーストリアに留学していた頃の話です。
授業で自己紹介をした時に趣味はスヌーカーです、とクラスメイトたちに伝えました。男達はみんなスヌーカーを知っている様子でしたが、女の子たちは何人かわかっていない様子でした。とりあえずこういうスポーツだよーと説明しました。その直後、インドネシア人の女学生ウィッチーが僕に質問をしてきました。

「それってつまりビリヤードのこと?」

その時僕は、それらの違いをなんと説明すればいいのかなぁと考え始めた瞬間でした。推定齢30ほどの女教師ベリンダが大声で即座に

「NO!!!」

と叫んだのです。めっちゃびっくりしました。
ベリンダの説明では、ビリヤードとスヌーカーは明確に違う競技である。とのことでした。スヌーカーはスヌーカーであり、ビリヤードには含まれないと。うむ、よく知ってるなベリンダ。
授業の後、僕はベリンダのもとへ向かいました。スヌーカーへの造詣があるのではと考えたからです。しかし、話してみるとUKプール(イングリッシュ・エイト)はやったことはあるが、スヌーカーはないと言われました。
ここで僕は衝撃を受けました。キュースポーツを嗜まない一女教師がスヌーカーとビリヤードの言葉を使い分けている、それだけオーストラリア人の(中には?)キュースポーツへのリテラシーが高いということだからです。もう一人仲が良かった男性教師にこの事を話したら同様にスヌーカーとビリヤードは違うものだと言っていました。実際どれだけのオーストラリア人がこの違いをわかっているのかは定かではありませんが、日本人で答えられる人は皆無でしょう。

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さて、世界各国ではどうなのでしょう。マーティン・グッドウィルによるとイギリス圏ではビリヤードといえばイングリッシュ・ビリヤードのことを指し、北アメリカではキュースポーツ全般、その他の国ではキャロム競技のことを呼ぶ傾向にあるそうです。日本のキュースポーツ=ビリヤードという図式はアメリカ合衆国の影響と言えそうです。

そこで僕が提案するのは十把一絡げにビリヤードというのではなく、それぞれの名前できちんと呼ぶということです。これを聞いて「めんどくさいやつだなぁ、一つにまとめたほうが楽でいいじゃんか」という意見が多数上がるのは承知のうえです。ではなぜこのような面倒くさいことをするのかというと、言葉とは世界の切り取り方、切り取り方に大きな影響を与えるからです。

英語教員の松井力也氏は著書「日本人のための英語学習法」の中で、日本人は「米」を発育や調理の段階ごとに稲、もみ、米、ごはんと細かく呼ぶが、英語では全てriceと訳される例を上げています。世界観の切り取り方が非常に大雑把ですよね。
そして、現在の日本に話を戻します。キュースポーツを嗜まない人々はこの状況に陥っているわけです。なるほど、キュースポーツの年間参加人口が減少しているのも頷けます。僕はこのままでは「ビリヤード」というものは、陳腐で多様性のないお遊びの一つ、という認識なってしまうのではないかと心配しています。

ビリヤードの普及活動、という言葉をよく耳にします。子どもたちにポケット・ビリヤードを体験してもう行事などは重要なイベントだと思います。しかし、それと同時に、これまでこのスポーツが積み上げてきた歴史や文化、つまり言葉の「本当の」意味を教えることも同じくらい重要だと思います。よくスヌーカーの試合の客席には高齢者がよく目に止まります。彼らにとってスヌーカーはスポーツであると同時に文化であるように見えます。日本に決定的に欠けているのは文化としての側面なのではないかと僕は考えます。しかし、そこでいきなりスヌーカーの詳細を説明したところで誰も耳を傾けてくれないでしょう。
このブログを御覧になっている方は、もっとスヌーカーというスポーツが日本で市民権を得られたいとお考えでしょう。そのためにまず私達ができる事は、言葉を、責任を持って正確に伝えることだと僕は思います。

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そこでより正確な呼び方としては
・9ボールや10ボールを行う競技。日本では9フィートテーブルが主流で、それぞれのボールに番号が書かれてある。これをアメリカン・プールまたはポケット・ビリヤードと呼ぶ。

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・スリークッションやバンドゲームを行う競技。10フィートテーブルが主流でポケツトがないテーブを使用する。これをビリヤードと呼ぶ。

・7色の的球を用いて点数を競う競技。12フィートテーブルが主流。これをスヌーカーと呼ぶ。

・12フィートテーブルで3色のボールを用いて点数を競う競技。これをイングリッシュ・ビリヤード(もし相手が英国圏の文化が根強い地域の出身なら、単に「ビリヤード」でも通じます。)

・7フィートテーブルが主流で行われる8ボールのルールに近い競技(ファールの際は2ショットルールを採用)。ポケットの形状はスヌーカーと同じ。これをブラックボール、UKプール、イングリッシュ・エイト(これは完全な和製英語)と呼ぶ。

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・中国で行われているスヌーカーテーブルの形状で9フィートのテーブルを使う競技。これをチャイニーズ・プール(8ボール競技の場合はチャイニーズ8ボール)と呼ぶ。

・ロシアで行われている12フィートテーブル(独特の形状)で的球を15個(または16個)使用し、ボールを入れていく競技。これをロシアン・ビリヤードと呼ぶ。

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世界的に主流なキュースポーツはこれくらいではないでしょうか。

呼び方を明確化させたぐらいでいったい何が変わるんだ!と厳しい意見を言いたくなるかもしれませんが、キュースポーツの文化を根付かせるためにやらなくてはいけない第一歩はこの識別だと考えています。

2018年は日本キュースポーツ界にとって実りのある年になってもらいたいですね。ほんの少しでもこの文化が根付き、全体のキュースポーツリテラシーが向上してほしい、というのをこのブログの今年の抱負ということにしておきます。そのためにはもっと記事を書かなくてはいけないなぁと思いつつお雑煮を食べている元旦でした。

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