スヌーカー観戦マニュアル その4 : フリーボールについて

スヌーカー独特のルールにフリーボールがあります。僕がスヌーカーを始めた頃、このルールはそんなに大事なモノとは思っていませんでした。せいぜい、好きな球が狙えるボーナスステージぐらいの感覚でした。しかし、この競技の理解を深めて行くにつれて、このルールはある局面では重大な要素になり得ることがわかりました。今回はフリーボールというルールが何のためにあるのかわからない、スヌーカー初心者なら抱くであろう疑問に答えてみます。
まずはフリーボールの定義から見てみます。JSAのルールブック、第9章第13条によると

フリーボールは相手ストライカーのプレーがファールであり、残った配置がスヌーカー状態になった場合に、次のストライカーがノミネートするオブジェクトボールのことである。

とあります。
まずスヌーカー状態というのは何か?
スヌーカー状態とは、当てなくてはいけないオブジェクトボールがキューボールに対して右端から左端まで当てられない状態のことです。つまり、ほんのちょっとでも他のオブジェクトボールに隠れていたらスヌーカー状態といいます。

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他には、レール際にオブジェクトボールがあり、クッションが邪魔で端っこが狙えない場合はスヌーカー状態にはなりません。その場合、クッションはないものとして考えます。
今回はフリーボールの説明なので、スヌーカー状態についてはこのあたりでとどめておきます。細かいところを上げると、かなり長くなるので詳細を知りたい!という方はJSAのルールブック(PDF)の11ページ目の第9章第16条を参照してください。

 

さてスヌーカー状態とは何かがわかったところで本題に入ります。
相手がファールをした後、回ってきた配置がスヌーカー状態だった場合はフリーボールを選択できます。日本で馴染みのある9ボールの場合は手球がフリーボールになり、好きな位置において再開できますが、スヌーカーの場合は的球がフリーボールになり、好きなカラーボールを、本来狙う色の価値のボールに見立ててプレーを再開できます。

先月の香港・マスターズの試合でも大事な局面でフリーボールのシーンがありました。ロニー・オサリバンが1スヌーカーをつけられて(勝つためには最低1回はファールを奪わなければいけない状況)セーフティに行き、これをトランプがファールを犯してしまい、かつスヌーカー状態で残してしまいました。もしこの時フリーボールではなかったら、ロニーはレッドを狙うしかなく、再びセーフティ・エクスチェンジが始まっていたでしょう。しかし、今回はキューボールがブラックに対して最高の位置に止まったため、ロニー・オサリバンは見事クリアラスをして逆転勝ちを収めたのでした。

また特にフリーボールの効果が遺憾なく発揮されるのは、
レッドが1個以上テーブルに残っている状態で、2または3スヌーカーをつけて負けている時です。
なぜかというと、レッドが残っている場合でフリーボールをもらった時、カラーボールがレッドに見立てられるため実質レッドが1つ増えることになります。
例えばテーブル上の点数は35点で、自分が46点差(11点足りない)をつけられているとします。勝つためにはファールだけなら3回、相手のミスショットが必要です。しかし、相手がファールをした後、フリーボールだった場合はフリーボールでカラーボールを落とし、その後にブラックを入れれば(ファールの4点+フリーボール1点+7点)で一気に12点を稼ぐことができます。つまり3回もファールを奪う必要がなくなるのです。これがプロの試合では2、3スヌーカーがついていても、テーブル上にレッドが残っていればプレーを続行する理由です。
実際に3スヌーカー状態から1回のファールとフリーボールで追いついた試合

ただフリーボールを狙うとなると、手球の位置だけでなく的球の位置も他のカラーボールに近づけて「フリーボールになりやすい配置」を作る高度な技術が必要になってきます。

このフリーボールの攻防も非常に見応えがあります。動画が削除され該当のシーンを見せられないのが申し訳ないのですが、2014年のETCでのマーク・セルビー対リッキー・ウォールデンの試合では、テーブル上にレッドが残っている状態でセルビーが3スヌーカーをつけられており、フリーボールからの逆転劇を狙っていました。しかしリッキー・ウォールデンは賢くも、フリーボールにさえならなければ痛手を負うことはないと判断してセーフティをかけられても的球にかろうじて触れる程度の力加減で当てに行っていました。上の試合でディンが犯したようなスワーブ・ショットのミスを避けるためです。フリーボールなしでは、プロ同士で3回もファールを奪うのは至難の業です。その結果、ようやくセーフティミスをしたセルビーを見事仕留めたのでした。完全にリッキーの戦術が功を奏したシーンでした。

 

最後注意点を1つ、フリーボールの時にノミネートしたオブジェクトボールでセーフティをする(スヌーカー状態をつくる)とファールになります。
ただし的球がピンクとブラックだけの場合(テーブル上の点数が13点の時)は例外として、ブラックでスヌーカー状態を作ってもファールにはなりません。

このようにフリーボールというルールがあるだけでゲームの戦略性がこんなにも広がるのです。今後スヌーカー観戦をする時は、ぜひこのフリーボールというルールを意識してみると今までと違った景色が出てくるかも知れません。

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