どん底からやっとつかみ取った栄華:German Masters 2017 レビュー

寒さが増す2月のこの時期、今年最初のランキング・イベント、ジャーマン・マスターズがドイツの首都ベルリンのテンポドロームで開催されました。

ベルリンは芸術に趣がある都市だけあって、会場のテンポドロームも非常に鮮麗された建築物となっています。

5088tempodrom-aussen6.02-150dpi

ダウンロード

広大なアルプス山脈を連想させるようなデザインですね。しかも 色合いもシンプルで落ち着いており、スヌーカーをプレイするには絶好の場所ではないでしょうか。

418-19523

 

さて本大会ですが昨年の12月に予選が行われ、それを勝ち抜いた32人のプレイヤーが2月1日から5日にかけて試合を行いました。Last 32では、先月マスターズ史上最多優勝の新記録を作ったロニー・オサリバンと今シーズンプロ入り初優勝を成し遂げたマーク・キングが戦いました。もちろん前評判ではロニー・オサリバンの圧勝と予想されていました。試合もフレームカウント4-1とオサリバンが、あと1フレームで勝利というところまで持っていきますが、ここからキングが復活します。立て続けにフレームを取り、勝負はディサイディング・フレームへ。このフレームは控えめに言ってもミスが多く、特にオサリバンに関しては今シーズン最悪のプレイだったといっても過言ではないくらいミスが目立っていました。キングもミスを犯していましたがそれ以上といってもいいくらいです。結果、皆の予想を裏切り、優勝候補のロニー・オサリバンはLast 32で敗退してしましました。

C30iqlaWYAEg6N3

となると期待はもちろん必然的にマーク・セルビーへ向けられるわけですが、Last 32での戦いぶりから決勝進出間違いなしと思われていた(個人の見解です)のですが、Last 16でアンソニー・ハミルトンにまさかまさかの敗北を喫します。正直、後半のハミルトンは神がかり的なフルークに何度も助けられており、全世界のセルビーファンからすれば「そりゃないよー」を連発したことでしょう。

C33ArPUWQAAZabM
幸運の女神に見初められたおじさん アンソニー・ハミルトン

セルビーに勝ったハミルトンは、さらに破竹の勢いで勝ち進みます。世界ランキング12位のバリー・ホーキンスを準々決勝で倒し北アイルランド・オープンのリベンジを果たし、続いて世界ランキング2位のスチュアート・ビンガムを準決勝で下し、決勝戦へ進出を決めました。この現在世界ランキング52位の45歳のベテランが最後に決勝戦へ進出したのは、2002年のチャイナ・オープン以来の実に15年ぶりです!ちなみに、この時はマーク・ウィリアムズにフレームカウント9-8で敗れています。
ハミルトンはプロ生活26年目ですが、まだランキング・イベントで優勝した事がありません。
この千載一遇のチャンスをものにできるのか!?
そして不名誉な”優勝経験の無い最高のプレイヤー”といわれている汚名返上をなしえるのか!?

そんなノリノリのハミルトンと戦うのは今シーズン、ワールド・オープンに続くランキング・イベント2勝目を狙うアリ・カーターです。

C31BCSoWMAQFc9D
今大会2度目の優勝を狙う”キャプテン”アリ・カーター

カーターはLast 16でザオ・シントン、準々決勝で今大147を達成したトム・フォード(キャリア3回目)、準決勝ではディフェンディングチャンピオンのマーティン・ゴールドを倒し、2013年以来二度目の大会優勝を狙います。

 

IMG_20170205_224422

試合は大方の予想通りアリ・カーターが先行します。連続で3フレームを取り、このまま走り抜けるかと思われました。第4フレームでハミルトンが1つ返しますが、続くフレームをカーターが勝ち取ります。ハミルトンにとってはせっかくの晴れ舞台ですが、あまり調子がいいとはいえない状態です。このセッション最後の第8フレーム、試合後ハミルトンはこのフレームが試合を決定づけたと話していたように、このフレームをハミルトンが死守したことによりフレームカウント5-3でイブニングセッションへ向かいます。依然、アリ・カーターがリードしている状態です。

イブニングセッションはハミルトンが試合を支配し始めます。セッションをまたぐ6フレームを連取しフレームカウント8-5でキャリア初優勝に大手を賭けます。特記すべきは第10フレームから第13フレームまでハミルトンは118、73、74、70とハイブレイクを記録し内容でもカーターを圧倒します。

そして、運命の第15フレーム、ハミルトンのブレイクビルディングを2000人の観衆が固唾を呑んで見守る中、1球1球とフレームボールまで近づいていきます。残りレッドが3つ残った状態でピンクを入れつつ、パックにいきますが運悪くイージーな配置を作れませんでした。この時点でスコアは61ー12、ハミルトン49点リードの51点残りでした。勝つためにはあと赤を1つ入れなくてはいけません。幸いにもブラックの上にプラントを狙えるボールが2つあり、この厚みを入念に確認します。

これがウイニングショットなり45歳の初優勝を確定させた瞬間でした。

 

IMG_20170206_091252
神々しさすら感じられるハミルトン、まるで天から授かり物を受け取ったようです

45歳での優勝は、ダグ・マウントジョイが1989年に優勝したザ・クラシックの時の46歳に次ぐ最長記録です。それに加えて、プロ26年目にして初優勝というドラマティックな展開です。

しかし、凄いのはこれだけではありません。昨年起こった、マーク・キングの劇的な優勝は記憶に新しく、既視感を覚える人は多いと思いますが、今回はそれを遙かに凌駕する奇跡的な勝利です。それはなぜか?
ハミルトンの近年の成績を見ると理解できます。彼は2015/2016シーズン終了後のランキングが71位で本来ならドロップアウトし、今シーズンのメインツアーに参加できないはずでした。しかし、昨シーズンまで行われていたマイナーランキング・イベントのヨーロピアンツアーでなんとかオーダーオブメリット(メインツアー参加資格付与者)に選ばれ、新参者として、今シーズンはランキング最下位129位からスタートしたのです。(マーク・キングは、なんだかんだ20年間ランキング30位前後をキープしている。)
本来なら参加できなかったかもしれない大会で、あまつさえ初優勝してしまうのですから、人生とはわからないものですねぇ。

IMG_20170206_090854
母親と喜びに浸るアンソニー・ハミルトン

今回の優勝でハミルトンはランキング39位へ一気に浮上し、今大会の活躍により、ハミルトンは今日から始まるワールド・グランプリへの参加も決まりました。(初戦の相手はマーク・アレン)

もう華やか舞台に現れることはないと思われていたアンソニー・ハミルトン。今回の大活躍は多くのベテランプレイヤー達に希望を与えたに違いありません。どんなにどん底まで落ちても、努力せず諦めなければ必ず結果はついてくるという事をアンソニー・ハミルトンは印してくれました。

ありがとうハミルトン!
これが最終章ではなく、今後ますますの活躍を期待しています!!

Pocket

コメント

comments